資産形成論説明ノート2025

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 2025年に引き続き、資産形成教室を47日から、714日まで15回の予定で、『資産形成論 2025年テキスト』を解説するために、このノートを掲載します。テキストは、昨年度のテキストに、2024年説明ノートを反映して、改訂中です。例年、6月になりますが完成したら、ホームページに掲載します。それまで、次の『資産形成論 2024年テキスト』を参考にしてください。

                  『資産形成論 2024年テキスト』24shisankeiseroni.pdf へのリンク

4回目 2025428日 

23 個人確定拠出年金(iDeCo)制度
2. 4
 勤労者少額貯蓄制度
財形持家融資制度
25 NISA制度
2. 6 イベント表と資産形成制度の当てはめ例
要点・一般財形貯蓄、財形年金貯蓄、財形住宅貯蓄
  ・成長投資枠NISA、つみたて投資枠NISA
   ・イベント表へ資産形成制度当てはめ

2. 3  企業年金のつづき 個人確定拠出年金(iDeCo)制度

 山川氏イベント表で、妻の個人型確定拠出年金(iDeCo)が可能になっています。女性の資産形成について、山川氏と同様に、会社勤めで、同様に、ライフ・サイクル・プランを運用管理しているとする場合は、結婚後の共同資産形成になります。個人型確定拠出年金は、勤めている企業が、企業型確定拠出年金に加入していない場合、妻が専業主婦で、第3号被保険者である場合、個人で加入できます。転職や再就職の機会が多い業種であれば、企業加入していると、企業負担を再開できます。

2. 4 勤労者少額貯蓄制度と財形持家融資制度

 勤労者少額貯蓄制度は、厚生労働省の所管で、勤労者財産形成貯蓄、勤労者財産形成年金貯蓄および財形持家融資制度があります。年金と住宅に対しては、利子等非課税措置があります。従業員の定着性効果を期待する企業では、従業員が金融機関と契約し、運用指示は本人であり、事業主は給与天引き、金融機関からの運用状況連絡を仲介するだけの負担です。必ずしも、就職した企業が、これらの制度に加入していない場合は、年金および住宅頭金をつくる財形住宅貯蓄は、個人確定年金制度(iDeCo)およびNISA制度を利用するとよいでしょう。
 財形持家融資制度は、財形貯蓄・年金の残高に応じた融資を、事業主を通じて又は直接に、長期・低利な住宅ローンを35年間受けることができます。融資額は、財形貯蓄残高の10倍相当額(最高4,000万円)で、実際に要する費用の90%相当額までです。住宅金融支援機構の融資と併用できます。事業主は社内融資制度を国の資金の転貸で、負担を軽減できます。
 勤労者財産形成住宅貯蓄は、住宅所有をライフ・サイクル・プランに入れている場合、財形持家融資制度を利用する、初期資金を貯蓄する制度として有用です。元金利子を含めて、550円まで非課税ですから、その次の制度は、財形持家融資制度があります。
 日本銀行の超金融緩和が10年続き、預金利子率は001%程度でしたから、月2万円、年間24万円を10年間、続けても、240万円+1万円以下の利息しかなりませんでした。住宅頭金や教育資金は、定期預金では、目標額を貯蓄するのは、無理で、投資信託にすれば、10年で2倍になっています。新規購入層の住宅頭金は、超金融緩和期と名目賃金上昇がなく、現在の30代は、10年間、目標額の半分しか貯蓄していないことになります。金融政策で、ゼロ金利政策を10年続けると、住宅ローン借入者には、金利負担が少なくてすむが、年々、新規購入者には、頭金が未達になり、政策解除すると、金利が上がり、購入費が上ります。世代で負担の不公平性を生んでしまいました。
住宅地の選択
 各市の都市計画の用途地域を調べていると、昨今、農地は消滅し、都市計画は完成している市が多くなっていると思います。その中での選択ですから、家族で住みたくても、物件が少ないかもしれません。不動産の将来価値は、公示価格、売買例、利便性評価等で決まりますから、少なくとも、建物の耐用年数が来るまでに、土地の著しい減価が生じなければ、住宅投資は成功したことになるでしょう。

2.5 NISA制度

 NISA制度は、金融庁所管で、2014年から始まった少額投資非課税制度(Nippon Individual Savings Account)です。2016年から、ジュニアNISA2018年からつみたてNISAが始まりました。ジュニアNISA18歳まで原則、払出しができませんから、大学の教育資金に向いていますが、さらに、高校進学時に、特別払出しができれば、学資資金の性格がでて、よいかもしれません。つみたてNISA20歳以上、20年間非課税ですが、制度の延長は定められていません。
 
NISA制度
 「令和5年度税制改正の大綱」において、NISA制度は、新NISA制度に移行、2024年度以降のNISA制度は、抜本的拡充・恒久化の方針が示されました。

開始時期 20241月から
対象者  18歳以上、1口座開設できる。
投資枠        つみたて投資枠 (併用化)   成長投資枠
年間投資枠         120万円         240万円
非課税保有期間       無期限          無期限
非課税保有限度額           1,800万円(内 成長投資枠1,200万円)
口座開設期間        恒久化          恒久化
投資対象商品     積立・分散投資に適した    上場株式・投資信託等
                一定の投資信託       (毎月分配型投資信託等は除く)

2023年末までのNISA制度で投資した商品は、新NISA制度の外枠で、非課税制度を適用しますが、定められた保有期間が過ぎると、その商品を新NISA制度の口座に繰り越し(ロールオーバー)できません。

2. 6 イベント表と資産形成制度の当てはめ例

 個人確定拠出年金(iDeCo)、勤労者少額貯蓄制度と財形持家融資制度および新NISA制度によって、家族全体のライフ・サイクル・イベントを設定し、資産を非課税で形成できるようになってきました。
 日本銀行のゼロ金利政策は、解除されましたが、依然、政策金利は0.5%です。日本の金融商品だけの資産選択は、収益率目標を達成できそうもありません。本教室では、長期の資産運用を想定しますが、日本債券、日本株式、そのバランス、上場投資信託、不動産投資信託等の国産商品では、資産運用コスト以上の成績を上げるのは、難しそうです。第6章において、資産選択、定額購入、資産管理を学びますが、ここでは、イベント表と資産形成制度との対応させてみます。
イベント表の計画終身年齢
 私の身の回りを見ると、死亡率は男性の方が高く、女性は低いのが普通のようです。山川氏が平均寿命で亡くなった場合、妻は余命があり、共同財産を相続することになります。老後の安心には、このことも、ライフ・サイクル・プランでは、考慮すべきイベントです。自民党が「人生百年」時代と言いますが、それを可能とする退職後のモデル生活は何も政策導入しませんから、男性の平均寿命が80歳から、20年延びる「稼ぎと体力」、社会保障があるわけない。むしろ、「失われた20年間」で、所得が失われたので、栄養不足による体力の減退により、80歳台にとどまると予想するのが普通でしょう。女性もやはり、90歳台に、「失われた20年間」の「稼ぎと体力」の減少効果が効いてくると思われます。退職後、なんらかの運動を継続し、ミネラル、ビタミン、たんぱく質が不足しがちの、1週間の3食献立に変化がなく、惣菜ばかりをたべていると、筋肉が落ち、寝たきりになるようです。老後の食生活は、野菜中心の脂肪・たんぱく質を減らした、精進料理かという、想像をする人がいますが、それでは、体力維持に必要な栄養素が不足するのです。食は、生命の根源に与える活力ですから、少ない稼ぎから、食費を節約はしない方が、元気で長生きできます。
 私の『資産形成論2024年テキスト』では、山川氏は33歳であり、妻は専業主婦です。私自身は、妻に対して、資産形成を実行してきましたが、これは普通なのか、そうでもないのか。夫婦で、妻には、ライフ・サイクル・プランをどう考えて、実行しているのか、実態調査があるのでしょうか。

 前回、ライフ・サイクル・プランの例として、海原さん、山川家のイベント表を載せました。それぞれのイベント表に資産形成制度を当てはめます。
 
海原さんイベント表と資産形成制度
 海原さんイベント表で、各年の収支差額表が計算できると、勤労者少額貯蓄制度の内、勤労者財産形成住宅貯蓄によって、毎年、ボーナスを入れて、住宅取得頭金を550万円貯蓄することが、主要な資産形成の目的になります。結婚が難しくとも、退職後、老後の安心による、退職後の生活資金資産形成より、住居の手当はライフ・サイクル・プランでは最も重要です。それを控除した差額が、退職後の生活資金資産形成になり、個人確定拠出年金(iDeCo)を事業主の負担を利用しつつ、運用します。海原さんの場合は、毎月、最大1万円、残りは、中期目的の自己資産形成でNISA制度を利用します。海原さんの収入では、NISA制度の上限を超えることはありません。

               海原さんイベント表

年齢  23         30   35                 60           65
    確定拠出年金(iDeCo
    財形住宅貯蓄       財形持家融資制度(フラット25) 住宅ローン完済 年金生活
    つみたて投資枠NISA
    成長投資枠NISA
  
 資産家と違い、勤労者は、毎月の月給から、少額積み立てをします。制度金融では、預金以外の金融商品を、選択できますから、例えば、住宅資金の目標550万円は、10年より早く達成できます。教育資金でも、預金以外の金融商品で、長期積立をすれば、目標期間を短縮できます。

山川家イベント表と資産形成制度 

 山川氏の個人資産を制度支援の資産形成制度を当てはめてみます。
山川氏は大学を卒業して、33歳とします。65歳で、現在の会社を退職します。山川氏のイベント表は、妻は、30歳で6歳の子がいます。

                     山川家イベント表

年齢夫     33    35       48   56          60   65   68
    確定拠出年金(iDeCo)                      年金生活
    財形住宅貯蓄   財形持家融資制度(フラット25)        住宅ローン完済
    つみたて投資枠NISA   
     成長投資枠NISA
  妻    30           45   53         57  62     65
      確定拠出年金(iDeCo                                           年金生活
      つみたて投資枠NISA
       成長投資枠NISA
  子    6                     21

 テキスト第6では、資産形成の期間(フロー)表である収支差額表と資産の時価評価表(ストック)である期末貸借対照表をモデル計算しています。経済社会活動の結果は、経済活動した期間中の財・サービスの変動量の収支を合計するフロー表と、活動期間の期末時点に、資産/負債・正味資産を評価したストック表で記録することになっています。家計部門である山川家に、ライフ・プラン計画期間において、各年のフロー表とストック表を作成しています。

各年、各月の収入の見通し
 現役世代である海原さんと山川家は、各年、各月の収入の見通しが決まっていないとライフ・プラン計画表は作成できません。各年、各月の収入の見通しは、日本経済と世界経済の見通しが必要です。世界経済の見通しは、OECDIMFの毎年(少なくとも2年先)の予測が発表されます。日本経済の見通しは、内閣府から、1月発表されていますが、単年度であり、長期見通しは、日本において、権威がある見通しの定期的公表はないと思います。
モデル賃金カーブ
 ライフ・プラン計画期間において、現役世代の給与見通しをどう計算すればよいのでしょうか。私は、教職員組合に、就職と同時に全員加入で、退職まで、組合員でした。大阪府下大学教職員組合で定期的に、職種別賃金、年齢別賃金、ボーナス、退職金、研究費等組合間でデータが印刷されています。モデル賃金カーブは、推計するのが容易でした。しかし、他の業界と同様に、組合員は、1998年日本金融危機以後、雇用不安、新卒の超氷河期とつづき、全国的に、組合員は減少していきました。私の勤めていた大学もそうでした。教授は、管理職ですが、組合員のままでは、大学行政の管理職にはなりにくい傾向があります。現在でも、他の業界でも、組合員が労務担当管理職になれても、一般管理職はむつかしいのではないでしょうか。
 私的には、そういう行政管理職に野心は全くありませんから、学務、教務、研究に集中する一方、地方経済の国際競争力向上、アジアの経済発展に貢献したいと、国内、アジアを視察して、現場で考えていきました。私は、社会主義者ではありませんが、組合員であれば、大学行政の労務情報は、非組合員より、得ることはできますので、満足していました。38年間で、最初は、賃金交渉、教育・研究費でしたが、阪神淡路大震災後、互助会が解散、2000年以降、創立時の教職員が退職するのに伴い、退職金規定の大改正をしました。賃金カーブは、大阪府教職員に準拠していましたが、独自の賃金カーブになりました。その後は、1998年以降の金融危機が終わり、団塊ジュニアの入学増も終わり、日本経済は、本格的な停滞期に沈みました。大学の組合員は減少、賃金は上がりませんでした。
 金融危機以前は、組合の団体交渉にも参加したし、そこで、関西の大学教職員のモデル賃金を知ることができました。普通の会社員では、その資料は配布されませんので、自分の会社のモデル賃金は、サイトで、知るしか方法はありません。大阪市では、モデル賃金統計表がありましたが、維新の会が府政、市政を統合する段階で、発行しなくなったようです。もちろん、公務員は、公開されているので、調べることができます。特に、年齢別に、各業界の平均賃金を知ることができれば、ライフ・プラン計画期間の給与所得を推計できます。サイトで、業界の年齢別給与所得は推計があります。関西の大学教職員のモデル賃金等一覧ほど詳細な資料は、公務員資料と同じだと思いますが、他の民間企業の労働組合で、そのような業界モデル賃金資料があります。例えば、産業総合研究所『2024年版モデル賃金実態資料』がありますが、市の図書館には、ありません。類似の『2019年版モデル賃金・年収と昇給・賞与』はありました。
 大学と教員組合の毎年の賃金交渉では、大阪府教職員俸給表に準拠していましたが、大学独自の俸給表に移行しました。業界モデル賃金資料は、労働関係の研究所で毎年改定されています。しかし、一般には、手にすることはできません。各種業界の平均モデル賃金資料として、国家公務員俸給表「行政職俸給表()」や地方公務員給料表は、サイトで、検索できるので、参考にできます。
モデル賃金曲線で定年までの収入系列を推定する
 さて、このようなモデル賃金曲線は、サイトでシミュレーションしています。大学では、学生に、必ず、モデル賃金曲線を説明しました。「波乗り3波乗り」と言って、終身雇用・年功序列職階級制(公務員的ですが)においては、入社10年後、社員一斉、係長波に乗り(1年の評価で、平波の場合もあるそうで)、次は課長波、部長波がモデル賃金曲線にあります。上役が毎年部下を査定し、評価しています。課長波、部長波に乗れるのは、かなり高度な能力がないと乗れないと、説明していました。上昇志向の強い人は、それなりの努力を上役に、付き合いをよくして、アピールするようです。評価が上役全体で決まる客観性がある社風ならば、必要がなく、評価基準を満たすことに専心すべきです。しかし、民間では、情実が効果的かもしれません。
 男性社員は、妻を専業主婦で、家族を養えましたが、現在は、係長波は消滅しないにしても、残り2波は、年功序列より、能力主義になっています。夫婦、共稼ぎしないと、家族を養うのは、かなり難しくなります。東京では、3人核家族が多いのも、生活水準を維持しつつ、子を二人以上持つのは、経済的に苦しいのでしょう。地方では、都会生活が身近にありませんので、子供は2人以上、所得水準が東京ほどありませんから、共稼ぎの方が専業より多い傾向があります。地方では、食べる心配のない、両親が近くにいて、子供を世話してもらえる、暮らしやすい平和な環境があれば、子を二人以上持つ若年家庭が多い。少子高齢化がすすみ、人口流出している、過疎化町村では、所得を田舎暮らしを維持する所得が稼げなくなっているのです。
 業界および業界内でも、モデル賃金曲線は格差があります。モデル賃金曲線が会社から開示されれば、在職者は退職までの予想所得の参考になります。一般の業界に就職して、組合員用のモデル賃金曲線は、会社側から、提示されることは、まずないでしょう。かつての日本では、終身雇用・年功序列職階級制のもとでは、年齢で、給与が上昇するので、モデル賃金曲線は、次年度の上昇率をみれば、知る必要もなかったかもしれません。
終身雇用・年功序列職階級制から、能力主義へ移行
 日本経済は、人口減少が始まっていますので、労働力不足になる一方、日本経済は、第3次産業が主要産業となり、中小零細企業が多数を占める労働集約的産業です。男女賃金格差が是正されないため、低賃金の女性労働が必要とされる産業でもあります。第3次産業は、製造業と違って、寡占的ではないので、いわゆる大企業の賃金水準は支払えません。したがって、男性の給与水準は、35歳以上では、昇給が頭打ちになる傾向があります。女性は、男女格差があり、大卒女子は、35歳になると、平均賃金が大卒初任給に戻る傾向があります。
 日本の大都市の第3次産業が進行し、労働の内容が、知的労働生産をともなわない事務職は、生産性に見合う賃金を測定できないので、2000年の金融業界から製造業を中心とした業界再編で、終身雇用・年功序列職階級制で、賃金は支払えず、能力主義に移行したといわれますが、第3次産業のサービス業では、元来、能力の評価は、上司の主観、人的関係に依存しやすい。上司の能力を越えれば、上司のいじめ、降格、転勤、転籍もあります。直属の上司に、「上役になりたい。」と飲み会で口を滑らした人が、上司にウザイと見られたのか、子会社に飛ばされたと、話してくれました。私は、「そういうことを口に出すのは、危ない。」と余計なお世話をその人に言っていましたが。
 神戸大学大学院時代、アメリカに研究にいかれた後尾哲夫先生と雑談で、「アメリカで、研究するのと、日本とどう違いうのですか。」とたずねると、「アメリカでは、なんでも、日本より大きく育つ。日本では、研究資金がなく、鉛筆と紙でしか研究できないから、研究成果は小さい。」私が買ったのは、関数電卓「CASIOfx-115」で、まだ、働いております。アメリカは、能力主義の殿堂だが、日本の大都市で、日本流能力主義になると、能力評価が恣意的になり、伸びるものは引きずり落とす、日本古来の「出る杭は叩かれる。」になりがちです。20年間、東京の大卒賃金は、実質賃金は上昇しない。日本流能力主義賃金の公正価値は測れない。

今週(2025428日~52)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、21日から26日まで、ワシントンでIMF・世界銀行周期総会が開かれました。IMF22日、2025年世界成長率見通しを1月の3.3%から、2.8%に引き下げました。引き下げの原因は、トランプ関税の賦課です。2320ヵ国財務相・中央銀行総裁会議が24日まで、ワシントンでありました。21日フランシスコローマ教皇が死去され、26160か国以上から首脳、閣僚、宗教関係者の参列があり、葬儀が行われました。
 今週のイベントは、27日石破首相がベトナム・フィリッピンに30日まで訪問します。30日日銀政策委員会・金融政策決定会合が51日まであります。
 先週の統計は、次の発表がありました。
                   予測値      実績値
21日 米3月景気先行指数        -0.5      -0.7
   中4月最優遇貸出金利(LPR)   3.1%       3.1
24日 米3月耐久財受注         1.4%       9.2
   日4月東京都区部CPI        3.2%       3.4
        3月スーパー売上高              18995480万円
 今週の統計は、次の発表があります。
                   予測値
29日 米4月消費者信頼感指数      
30日 日政策金利            0.5
    3月鉱工業生産指数        1.2
   米13月期GDP          0.4
    3月個人消費支出         0.4
      個人所得           0.4
    3PCEコアデフレータ      2.6
1日 日4月消費動向調査
2月 日3月有効求人倍率        1.25
    3月完全失業率         2.4
   米4月完全失業率         4.2

 統計は、国民総支出GDE構成要素、物価、利子率について、日本、米国、中国の発表結果を一覧で以下に表します。
日本                  3月         4月        5
GDP(前期比)      
消費コンビニ売上高   
  スーパー売上高   18995480万円
  百貨店売上高    
投資(工作機械受注統計)  
輸出          
輸入          
 貿易収支       
物価指数        
利子率         0.5
株価          36790.03      34609.00
(2金曜日の前営業日)  25/3/13       25/4/10        25/5/8
原油価格        71.6ドル
ドバイ、現物1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計) 
完全失業率       
景気動向一致指数    
      先行指数     
米国            3月         4月        5       
GDP(前期比) 
個人消費
投資(工作機械受注統計) 9.2
輸出         
輸入         
 貿易収支      
物価指数       2.4
利子率        4.5
株価         40813.57       39593.66
(2金曜日の前営業日)  25/3/13       25/4/10        25/5/8
原油価格       71.6ドル        
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、5月渡し、(2金曜日の前営業日)
個人所得
完全失業率        4.2%
景気動向指数      
     指数       
中国          3月         4月        5
GDP(前期比)     5.4
個人消費
投資
輸出         
輸入         
 貿易収支     -7367億元
物価指数       
利子率(1年物LPR) 3.1%        3.1%        
株価(上海)      3358.73       3223.64
(2金曜日の前営業日) 25/3/13       25/4/10        25/5/8
個人所得
完全失業率     
景気動向指数    
      指数     

日本       2024年12                   2025年1月        2
GDP(前期比)     
消費コンビニ売上高14071100万円   95069700万円  88746200万円
スーパー売上高  127074504万円 14875248万円 1591492万円
百貨店売上高     6616億円      4805億円      4254億円
投資(工作機械受注統計)143094百万円 116146百万円    118215百万円
輸出        94737億円     75022億円   91911億円
輸入        94113億円     104401億円   86066億円
 貿易収支       623億円    -29379億円     5845億円
為替レート(/ドル)  150.34                 158.33円      154.36
(2金曜日の前営業日) 24/12/5       25/1/9       25/2/13
物価指数(総合指数)   3.6%        4%         3.7
利子率         0.5%       0.5%         0.5
株価         39395.6円     39605.09円      39461.47
原油価格       71.8ドル        76.3ドル      76.4ドル
ドバイ、現物1バレル、ドル (2金曜日の前営業日)
個人所得(毎月勤労統計)  617375円    292468円      289562
完全失業率        2.4%       2.5%        2.4
景気動向一致指数    116.8       116.2        116.9
      先行指数    108.9       108.2        107.9

米国           12月            1 月        2
GDP(前期比)      2.4
個人消費       5656億ドル   
投資(耐久財受注)    2761億ドル     2823億ドル    2893億ドル
輸出         2665億ドル     2698億ドル    2785億ドル
輸入         3649億ドル     4012億ドル    4011億ドル
 貿易収支      984億ドル    -1314億ドル    -1227億ドル
PCEコアデフレータ  2.8%        2.6%        2.8
消費者物価指数    2.9%        3%         2.8
利子率        4.5%        4.5%        4.5
株価(NY)     44765.71ドル   42635.2ドル     44711.43ドル
(2金曜日の前営業日) 24/12/5       25/1/8        25/2/13
原油価格       68.3ドル      73.92ドル(25/1/9)   71.29ドル
NY、先物、標準品WTI1バレル、ドル、 (2金曜日の前営業日)
個人所得       25.119兆ドル    25.345兆ドル    25.442兆ドル
完全失業率      4.1%        4.0%        4.1

中国           12月             1 月        2
GDP(前年同期比)   5.4
個人消費(小売売上高) 3.7%                 4.0(12)
全国固定資産投資   3.3%         3.2%        4.1
輸出         3356億ドル           38800億元(12
輸入         2307億ドル           26600億元
 貿易収支      1048億ドル           12200億元
物価指数       0.1%        0.5%       -0.7
利子率(1年物LPR)  3.1 %       3.1%       3.1
株価(上海)     3368.86      3211.39      3332.48
(2金曜日の前営業日) 24/12/5       25/1/8      25/2/13
個人所得       
完全失業率(四半期発表) 5.1%       5.4

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1回目 202547

1 はじめに

 就職すると、まず、公的保険制度に加入し、失業、労働災害、疾病、介護等の保険事象が、身にふりかかって来た時の備えをします。同時に、生涯にわたる資産形成は、公的年金制度および財形制度を利用しつつ、毎月の給与および夏冬2期の賞与を、天引きして、利息、配当、収益などが非課税になる資産に投資することが、基本です。公的年金制度(国民基礎年金+厚生年金)、財形制度(住宅財形550万円+年金財形550万円)、企業年金(企業型年金、個人型確定拠出年金iDeCo)および新NISA制度(家族一人あたり終身1800万円)の投資可能資産総額は、平均的勤労者が、可処分所得から、毎月の消費支出を引いた、貯蓄額をもとに、定年まで、各種資産に投資する合計額を超えています。
 いわゆる資産家は、制度的非課税枠を超える自己資産を所有、経済・金融知識があり、自分で、資産運用でき、資産収益を平均以上、稼ぐことができる人です。自己資産が多いが、資産運用に専念できない人は、大口資産投資専門業者に資産を委ねることができます。

2025年の資産形成教室の方針

『資産形成論 2025年テキスト』第2において、公的保険制度、年金制度および財形制度の概略を頭に入れることを目的としています。20241月から、新NISA制度が、はじまり、特に、株式投資を主体とする投信信託および個別株への投資額が、毎年、つみたて枠NISA120万円、成長枠に240万円を上限として投資でき、生涯上限1800万円まで投資信託および上場株式に投資できるようになりました。夫婦では、3600万円まで、非課税になります。

 3では、年金制度、財形制度および新NISA制度を用いて、資産形成する資産の特徴と、それらの資産を市場で購入する場合、そのような制限があるかを学びます。また、売買する資産の価格は、計算方法が違っている場合があります。その評価方法を実例で計算します。先物商品では、予想収益率およびその標準偏差が価格の計算に入ります。
 
 4では、個人が、一生涯にわたるライフ・サイクル期間において、定期収入を消費に支出し、過不足を自己金融あるいは、金融機関から融資を受け、貯蓄、返済をくりかえし、退職後の年金生活に十分な資産形成をすることを、計算で求めます。ライフ・サイクルの途中では、定期収入を超える出費があるイベントがあります。たとえば、子供の進学時の入学金・授業料等です。また、車や住宅を購入する場合です。その過不足を自己金融すれば、資産を取り崩し、あるいは、金融機関から融資を受け、返済します。退職すれば、退職金と年金および老後の蓄えで、残りの生涯を過ごすことになります。そのようなイベントに対応して、定期収入から天引き貯蓄される額を、財形制度(住宅財形550万円+年金財形550万円)、企業年金(企業型年金、個人型確定拠出年金iDeCo)および新NISA制度(家族一人1800万円)に、配分して、各イベントに備える資産形成は、どのように、決めるとよいかを次のように理論的に求めます。

 経済学の金融論では、家計は、1期間に稼いだ所得と繰越貨幣量をもとに、予算制約式を立て、その中で、効用関数を最大にする消費支出と次期繰越貨幣量を求めます。この計画期間を終身までのばすと、ライフ・サイクル理論になります。例えば、80歳まで、計画することができます。

① 貨幣一時的一般均衡論を確実性下2期間モデル
  ライフ・サイクル理論の応用は、1期間に稼いだ所得と銀行からの借入金をもとに、消費支出を決めて、次期から、返済期間ほど、返済金を決めることができます。
② 貨幣一時的一般均衡論を応用して、不確実性下貨幣・債券・株式の現物・債券・株式の先物市場均衡論を説明する
 ①では、将来が確実性下の多期間一般均衡理論でした。不確実性下にある2期間モデルで、前期保有の3資産と今期繰り越し貨幣をもとに、期待効用を最大にするように、今期、資産需要を決めます。その際、期間2では、2資産の先物市場が開かれているとします。2資産の先物契約量が決定されます。
③ 資産先物理論とオプション理論の関係を説明し、オプション市場の使い方を考える
 ②で契約した資産の先物市場価格をもとに、期間2において、いかなる価格が成立しても、資産価値が変化しないように、オプション保険料を、今期支払う、または、受け取るオプション理論を説明します。

 5では、資産選択理論を3資産モデルで説明し、最適ポートフォリオに従った、
資産売買を説明します。不確実性下にある資産市場で、3資産の投資割合を決定しました。
 資産形成論では、次期繰越貨幣量と前期の投資収益を、3資産、預金、国債、株式に、平均収益率と、リスクの指標である平均収益率の標準偏差で作られる有効フロンティアから、期待効用関数が最大となる、資産構成(ポートフォリオ)を選択します。

 6では、若年世代、壮年世代、老年世代の3世代のライフイベントを想定し、第5章の理論・方法にもとづく資産形成計画、運用・管理を考えます。運用管理については、運用は、天引きの定額拠出を原則としていますから、そのような運用法は、商品を固定し、定額で購入するドルコスト平均法が、推奨されます。しかし、運用期間が6カ月を越えると、複数以上の商品では、経済・金融変動で、収益率の平均値やその標準偏差が、予定の幅を外れることが生じます。そのときは、当該商品の購入を止め、範囲内の商品を購入するリバランス法があります。

若年世代 新卒、海原氏を例にとると、海原氏は、新卒で、入社後、10年間のイベント表を作成する。イベントは、仕事を習熟すること、婚活をすることである。企業キャリアアップ制度、厚労省キャリアアップ制度を利用、自己研鑽を心がけ、年収を少なくとも年12万円昇給させる。入社10年間で、この最低限の昇給制度がない企業は、大学卒を必要としない業種である。
 2000年の米国IT不況、2003年の金融再編で、毎年の就職活動は、内定率が下がり、超氷河期になった。2008年リーマン・ショックで、米国は再び、金融恐慌に陥り、欧州も南欧を中心に、国債価格が下落し、不況に入った。その間、貿易が縮小、日本経済の停滞は継続した。大手企業は、新入社員の選好を絞り、速戦のある学生を採用するので、大学4年間で、入社前職業訓練をするように、4年間段階的に、大学キャリア教育カリキュラムで、自己研鑽の方法を身につけさせようになった。現在も、そのカリキュラムは、全国の大学で、実施されているはずである。
 新卒社員海原氏は、入社した企業で研修をし、10年間のライフイベントに、キャリアアップの社内外、自己研修プログラムの時間を取り、各種資格の一つをとって、有資格者の昇給を手にする。その費用は、入社3年から、厚労省、当該企業の助成金を得られる。私のゼミでは、FP3級、宅地建物取引主任者、簿記3級受験を勧め、ゼミでも、過去問を解いていた。2000年から、大卒の就職事情が悪化していたため、就職指導もするようになったのである。就職後も、昇給には、資格があると、職種の範囲が増えるので、資格試験問題の解き方は、身に着けた方がよい。その自己負担金と、時間を定期的にさかなければならない。
 消費支出は、年収の8割である。消費生活を充実しつつ、自己研鑽費、婚活費は消費支出に含まれる。年2回のボーナスで、実物資産形成として、住宅頭金500万円を貯蓄する。収支差額が出るが、これを金融資産形成に使う。テキストでは、海原氏のイベント表にもとづく期末貸借対照表を作成しているが、その運用益を反映していない。本教室では、この運用益が出る方法を学ぶ。
 最後に、実際の投資は、商品を固定し、定額で購入するドルコスト平均法をとり、半年以上1年で、その間の経済・金融変動で、収益率の平均値やその標準偏差が、予定の幅を外れることが生じる。そのときは、当該商品の購入を止め、範囲内の商品を購入するリバランス法をとる。したがって、ドルコスト平均法の投資方法は、経済学でいう動学的な経済・金融情勢に判断に基づいて、動学的な投資方法であることが分かる。

 資産形成計画、運用・管理には、政策、景気等の変動を予想することが重要な視点であるので、2025年、915日から1222日まで15回の予定で、財政・金融政策とマクロ金融経済について、『金融論2025年テキスト』を解説する。

経済政策について
 コロナ禍において、日本政府の長期政策方針が転換されました。
 1)地球温暖化対策には、各国経済が、持続して、成長を続けながら、温暖化ガス排出ゼロの経済・社会を実現できるかどうかが問題であり、そのための技術革新の方向付けをし、投資しつつ、経済・社会を誘導しなければなりません。政府は、2050年実質ゼロの目標を取っています。実際に、政府は、ウクライナ戦争を機に、実質ゼロの目標を取り入れた、エネルギー源の多様性に向かった行動計画をしている。
 
 2)実質ゼロ目標年次計画にしたがう、国際技術革新のための投資計画、中国の一帯一路世界戦略に対抗して、自由開放貿易圏防衛協力計画が、新たに策定され、民生用車両、航空機、船舶、陸上軍車両、軍艦船、軍用機、ミサイルのCO2排出ゼロ化のため、新燃料、新型エンジン装備によって、輸送CO2排出ゼロ化を実現する方向性が出てきました。
 
 3)デジタル庁の設置により、経済活動および社会活動によって、送受信される情報量が多い情報社会が、日本の仮想情報社会で、実現する方向性で、政府が活動するようになりました。世界の情報社会に、接続され、情報の送受信が盛んになります。

 4)中国の半導体戦略に対抗して、米欧日台韓の半導体開発が、自前主義に移行しました。日本の半導体研究開発は、全分野にわたって、日本で生産されるわけではなく、得意な分野だけ、日本で生産していました。政府は、開発促進策をとり、熊本県に、台湾企業の工場を誘致しました。半導体不足で、家電、情報機器、自動車の製造に1年以上の遅れが出て、輸出減、原油・LNGインフレの輸入増で、日本独自の金融緩和の世界金利差が5%開き、円安になり、日本のGDPを下げました。今後、半導体関連企業は、国策支援をバックに、半導体全分野で、自前開発に投資をするかもしれません。
 
 
岸田政権は、以上の基本方針に従いつつ、長期政策方針にもとづき、日本経済を成長路線に乗せて、成長成果を労使双方が分配を享受でき、税制・投資資金支援をうけられる経済政策を目指しているように見えます。

 20248月自民党総裁選で、石破氏が総裁になり、10月首相に指名された後、衆議院を解散、裏金問題とインフレ対策の終了で、与党は過半数割れし、少数野党に転落しました。石破首相は、再指名を受けましたが、過半数野党の政策を取り入れた予算案を2025年3月末可決しました。石破氏の経済政策は、安部・菅・岸田政権までの政策を変更した結果になっています。

金融政策について
 日本経済は、大企業の寡占価格が市場を支配していて、物価はほとんど動きません。デフレではありません。ところが、ウクライナ戦争突入前後から、エネルギー価格、食料品価格が5%以上上がり続け、黒田日銀は、賃金率上昇を伴わないということで、少なくとも、金融緩和政策は、維持しました。その間、新規国債10年債利回りが2022410.21520233310.32、債券先物10年債(6)の利回りが、2022410.68820233310.802でした。その差は202241日で0.48220233310.473でした。これが黒田地銀のイールド操作いう、仕事でした。日本国債のプレーヤーは国と日銀で、イールド操作して、円安、原材料価格高騰に、全く、効果はなかった。
 金融緩和政策の離脱ために、国債を一定率で減少させる資産調整を一切いなかったために、黒田総裁以降の日銀総裁は、金利利上げすれば、国債市場の買い手に安く保有国債を手放さざるを得なくなる。そのままでは、日銀バランスシートの[貸付金+債券|預金]の資産<預金で、日銀は破たんする。国内外の関係者、専門家も、黒田総裁が退任するまで、何もしない日銀だろうと予想して、資金運用、調達して来た。国債市場を機能させるには、イールド操作は止めざるを得ない。
 
 世界的にインフレが燃え盛り、経済成長しなくなり、実質賃金率が低下し、国民の購買力が減少しました。円高、202241122円が、2023331133.48円になり、輸入燃料、食料の高騰に、国民生活は圧迫されました。
 物価上昇率は、一般物価指数の上昇率を言い、名目賃金率は、物価指数には入りません。黒田日銀では、物価上昇率2%と政策目標でした。物価上昇率+名目賃金率上昇率を政策目標に入れる中央銀行はありません。なぜなら、賃金率は、所得分配構造から決まり、社会主義国では、国の機関が、最低賃金と賃金階級を決めます。欧米では、最低賃金は、各自治体で決まりますが、最低賃金以上の賃金階級は、労使双方で決めます。賃金上昇に対して、中央銀行では、関与する政策手段はありません。黒田日銀も、賃金上昇率が伴わないとは言いましたが、2%以上あれば、金融引締めに移行するとは、最後まで言及しませんでした。20223月から、毎月、消費者物価指数は2%を越えました。その間、最低賃金は全国で、上昇しました。しかし、基本給が上がらないので、一貫して、実質賃金率(実質賃金率は、賃金率Wを物価指数Pで割ったWPで定義します。)は減少し、生活困窮者、年金生活者に、インフレによる生活水準の切り詰めが常態化しています。2023年の春闘から、大企業も数パーセントの賃金上昇に踏み切りました。
 20234月、植田日銀総裁に交代しましたが、依然、日銀はインフレを阻止できていません。黒田日銀の物価上昇および物価上昇に伴う賃金上昇が顕在化しきますので、金融引締めへ政策変更しなければ、2023年秋まで、インフレは止まらない。
 20243月ゼロ金利政策を解除、政策金利を0.1%としました。202470.25%に、202510.5%に利上げしました。20251月に就任したトランプ大統領の関税政策で、日本は202549日から、24%の関税が賦課されます。現在、株式市場は、下落し、円高に方向が振れています。日本から米国への輸出が減少することのGDP減少が0.7%あるとの推計もあります。植田日銀総裁は、政策金利を据え置きしそうです。

マクロ金融経済モデルと財政・金融政策の効果分析
 『金融論2024年テキスト』では、マンデル・フレミング開放経済モデル(MFEXモデル)を使って、財政・金融政策の有効性を理論的に論証しています。資産の運用は、ドルコスト平均法で、運用管理は、リバランス法を取っています。ともに、経済が変動すると、資産構成を変更する必要があります。
 MFEXモデルは、比較静学あるいは比較動学モデルであり、与件の一つが変化すれば、長期均衡値に収束する経路を表します。経済成長論や景気変動論のテキストでは、比較動学モデルでなく、人口成長率、生産関数に技術進歩率が仮定され、動学方程式が、一定の比率を満たして、成長するかを示しています。MFEXモデルは、ケインジャンの領域である不均衡市場と新古典派の領域である均衡市場の2種類に分けて、分析しました。経済成長論や景気変動論も2種類あります。
 貨幣をふくむ3資産、外国資産がある経済成長論や景気変動論は、複雑すぎて、テキストになるほどの典型モデルはありません。要するに、経済学は、内生変数、外生変数が、経済主体を増やせば、それだけ、増えてきて、物理学より、宇宙物理学のような、無数の天体の動きを、統一した理論で把握できるのかという話になるのです。しかし、手に負えなくなるほどの変数はまだない貨幣的MFEXモデルの均衡市場モデルを貨幣的経済成長論・景気変動から、動学微分方程式を設定し、解経路を求めれば、資本主義経済の発展経路を理論的に示すことになります。これが、経済予測のトレンドを理論的にしめすことになります。
 
 15週までに、景気,政策,海外の景気,政策等の変動を、市場関係者が予測するように理解することはむつかしい。そこで、毎週、日本経済新聞日曜版「今週の予定」から、イベントの「今週の市場」に与える影響を推測します。保有資産や購入予定の資産は、その結果を反映します。なぜそうなるかは、今年後半の『金融論2025』によって、理論的な方向性を説明します。

 変動要因の発表は、各証券会社のHPに、スケジュールが公表されています。重大発表は、情報が必ず漏れ伝わってくるので、市場の商品は、発表前に、反応し、価格が上昇するか、下落してきます.理論にしたがった各商品と変動要因を表にすると次のようになります。

商品        変動要因           海外

債券      日銀の政策会合 日銀短観  米国準備制度理事会 EU中央銀行

        消費者物価 為替レート    消費者物価指数 失業率

株式      政府予算 政策の変更    政府予算 政策の変更 

        四半期GDP          四半期GDP

        企業業績           企業業績

リート     長期金利 都市の地価発表  長期金利 都市の地価発表

為替      貿易収支 資本収支 日米の金利差 戦略商品(原油、金)

バランス    株式20 40 60の構成要素に対して,上記の変動要因按分

インデックス  債券の構成要素,株式の構成要素に対して,上記の変動要因

ETF       債券の構成要素,株式の構成要素に対して,上記の変動要因

 首脳会談、政策機関の会議の予想、結果は、新聞各紙に観測記事が載るので、参考になります。本教室では、日本経済新聞の毎日曜日の今週の予定と先週の結果を載せています。統計調査の発表は、各省庁、各業界団体、各証券会社のサイトに、掲載されています。マネックス証券のホームページ「投資情報『経済指標カレンダー』」が各指標の予想、実現値が出ていて、過去1年間フォローできます。

 毎回、202412月から、毎月、日本、米国、中国の統計データを掲載しています。それらのデータは、主に、景気変動を四半期国内総生産GDPで予測する指標です。
 国内総生産GDPは、総供給=総需要の等式では、GDPGDE+統計誤差です。国内総支出GDECIvIGExImと定義すれば、GDPの速報値では、左辺の数値が確定するのは2年後ですから、右辺のGDEに従って、各需要の構成要素CIGExImが発表されます。それらのデータをもちいて、構成要素の重回帰曲線を推計します。MFEXモデルに従い、四半期国民総支出関連データによって、簡易的に、次の四半期の国民総支出を試算することに取りかかっています。

今週(202547日~411)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、日銀3月の全国企業短期経済観測調査の発表がありました。42日、トランプ大統領は、米国との貿易相手国に対し、相互関税を賦課しました。日本は24%でした。世界一律、基本税率10%を日本時間5131分に発動しました。
 今週のイベントは、米国は、上乗せ税率を日本時間9131分に発動します。12日大阪・関西万博開会式があります。
 経済統計は、次の発表がありました。
                     予想値    実現値
2025
331日 日3月鉱工業生産       1.1%      0.3
     中3月製造業PMI       50.3      50.5
41日 日2月完全失業率               2.4
     2月有効求人倍率              1.24
    日銀短観大製造業先行き    10       12
              業況   12       12
          大非製造業先行き 29       28
              業況   33       35
      中3月財新製造業PMI    50.6      51.2
      米3ISM製造業景気指数  49.9      49.0
2日    米2月耐久財受注      0.9 %     1.0
3日    米2月貿易収支      -1100 億円 -1227億円
       3ISM非製造業     53.2      50.8
4日    日2月全世帯家計調査            0.5
      米3月完全失業率      4.1               4.2%
 経済統計は、次の発表があります。
                     予測値     
7日   日2月毎月勤労統計         2.9
      2月景気動向指数一致     116.6
              先行     107.9
8日   日2月国際収支貿易収支     5380億円
      3月景気ウォッチャー調査   
9日   日3月消費動向調査        34.8
      3月工作機械受注額
10日   米3月消費者物価指数       2.6% 
     中3月消費者物価指数       0.1% 


2回目 2025414

2章 公的保険および公的年金制度、企業年金および個人資産形成制度

 就職した場合、公的保険制度および公的年金制度に、就職先を通じて加入することになります。さらに、退職後の公的年金を補う企業年金制度および個人資産形成制度が、就職先の制度によって、選択可能です。前者は、就職先としては、できれば、定年まで勤めてもらいたいため、企業年金制度によって、退職金をつみたて、退職時に、一時金あるいは年金として受け取ることができるようにした制度です。
 
 個人資産形成制度は、人生100年の長寿社会を政府が認識し出し、そのために、公的年金、企業年金を補充して、個人が老後の蓄えを保有する場合、制度的優遇措置を取るための制度です。これは、老年世代が、人生平均寿命85歳を目標にすると、70歳を過ぎれば、リスクレスの定期預金で貯蓄しがちですが、昨今の長期ゼロ金利政策では、利息は、蚊の涙でしかありません。それでは、人生100年とすると、実は、介護老人のリスクが増大し、そのための出費が増加するのです。いわゆる、長生きリスクが高くなるので、元気なうちは、リスクオンで老後の蓄えを成長させなければならない事例が増えてきました。
 他方、公的年金について、2004年頃の年金問題では、新聞記事に、「団塊世代より若い世代は、次第に、保険料総額に支給総額が等しくなる」と試算されていました。それゆえ、65歳支給開始になりました。この話を当時の学生にすると、講義のあと、「私は、国民年金は払いません。」と言いに来たほどです。

 私が勤めていた関西では、2019年から、新入生人口が10年間減少する大学淘汰の時代に入り、4年後から新入社員が減少していきます。日本は、人口減少時代に入り、高齢年金支給者の割合が3割を超えだすと年金財政が悪化し、いずれ、70歳支給開始もありうるかもしれません。
 コロナ流行期、明らかに、適齢期の男女が結婚や出産の延期をしたため、出生率が減少しました。コロナ後、壊れた機会が復活するかは、経済・社会活動の回復次第ですが、将来の年金財政に影響は避けられません。政府も少子化対策に、子供世代の養育負担を軽減する財政・税制措置を講じはじめています。政府の政策により、若年世代の幼年期の子育て費用、壮年世代の教育資金が軽減されるならば、従来通りの形成目標、住宅、老後の安心に重点を移すことができます。
 資産形成を開始する若年世代、住宅ローンがあり、教育資金と老後の安心を貯蓄する壮年世代は、制度金融を利用すれば、利息、配当に課税されません。現役世代を15歳から64歳までの労働力人口とし、65歳から退職世代とします。2世代の利用可能な制度金融を表にすると次のようになります。

 NISAつみたてNISAは、2024年度、新NISAに併合され、2024年1月から、新制度に変更されました。今年の教室の中で、新NISAを取り上げます。旧制度の資産は、そのまま、最大5年まで、保有できます。その後は、新NISA制度に従います。

世代別の制度金融
    
    世代別      制度金融
 1)  現役世代    公的保険    医療保険, 労働保険, 雇用保険, 介護保険(40歳から)
               公的年金    国民年金, 厚生年金
               企業年金    国民年金基金, 確定拠出年金(DCiDeCo
             確定給付企業年金, 厚生年金基金, 年金払い退職給付
             NISA、つみたてNISA
             財形住宅貯蓄
                財形持家融資制度   

  2) 退職世代     年金収入=公的年金(-税控除)
                 DCiDeCo,財形年金,NISA,つみたてNISA等の取り崩し収入
            公的保険料(国保,介護)、自宅の場合固定資産税納付

               自宅, 不動産担保ローン契約,老人ハウスに終身契約

21 公的保険制度と民間保険

 2024年テキストでは、制度の概要を厚生労働省のHPより、要約しました。
 公的保険制度は、現役世代では、医療保険、労働保険、雇用保険、介護保険(40歳から)があります。事業所の規模、組織によって、これらの保険料や、給付金が異なり、雇用者の所得によっても、自己負担の保険料が異なります。
 医療保険では、保険の事象が生じた場合、かかる費用に、自己負担金があります。介護保険の対象者に認定されると、介護保険サービスが提供されますが自己負担金は、1割か2割です。

 私は、退職世代に属します。その立場から、公的保険と民間保険を資産形成の立場から、どうかけたらよいのかを考えます。
 退職世代の公的保険は、国民健康保険および介護保険であり、所得に応じて、保険料がランクづけられています。健康診断は毎年、基本的な項目で無料、有料の案内が市役所から送られてきます。介護保険により、各種サービスを受けるのであれば、要介護認定を判定委員会にしてもらいます。その際、毎年、介護認定に至った事由で診療した医者から、診断書を委員会に提出してもらいます。要介護に認定されると、要介護12であれば、その地域のケアマネジャーと自宅介護の契約をし、毎月、介護計画を立て、介護施設のデイサービス利用、介護ヘルパーの自宅派遣、介護補助具等のレンタル契約できます。要介護345であれば、特別養護老人ホームに入所できます。例外的に、要介護12でも認知症の程度により、特養に入所できます。ただし、申し込み順です。
 現職世代では、民間生命保険があります。現役世代に掛ける理由は、死亡保険金を年収の3倍以下で、掛けて置き、残された家族の生活保障を担保することです。退職に近づくと、退職後の終身医療保障に掛ける理由が切り替わります。成人病等の疾患を現役世代中に患った場合は、特に、入院、手術する場合があるので、国民健康保険でカバーできない自己負担金が発生し、要介護に認定され、介護施設を利用すると自己負担金が発生します。疾病と介護を民間保険金で補うようにすると、年金や資産形成資金から、自己負担金を支出しなくてもよいことになります。終身医療保険の死亡保険金は葬式ができますという程度、100万円にします。葬式は、最近は、家族葬が多く、身内だけで、葬儀会館で行う場合が増えてきました。
 現役世代で、自家用車保険、住宅保険などの損害賠償保険をかけることがあります。
 民間生命保険および民間損害賠償保険は、現役世代で、所得階層の内、余裕階層に属すれば、税制上、社会保険控除できますから、それらの民間保険の実質負担は減ります。医療・介護で、自己負担金が発生した場合は、確定申告で負担を還付されます。

今週(2025414日~418)のイベントと市場への影響度
 先週は、米国は、上乗せ税率を日本時間9131分に発動しました。10日金融市場の動揺を見て、米国は中国以外の相互関税賦課を90日延期することを発表しました。対中国関税は145%となりました。11日中国の報復関税は125%となりました。12日大阪・関西万博開会式がありました。
 今週は、13日大阪・関西万博が1013日まで開かれます。
 先週の統計は、次の発表がありました。
                     予測値     実績値
7日   日2月毎月勤労統計       2.9%      3.1
     2月景気動向指数一致     116.6      116.9
             先行     107.9      107.9
8日   日2月国際収支貿易収支     5380億円    7129億円
      3月景気ウォッチャー調査   45.4       45.1
9日   日3月消費動向調査       34.8       34.1
     3月工作機械受注額
10日  米3月消費者物価指数      2.6%       2.4
    中3月消費者物価指数      0.1%       -0.1
今週の統計は、次の発表があります。
                     予測値
14日 中3月貿易収支
   日2月鉱工業生産指数        0.3
16日 日2月機械受注          -0.7
    3月小売売上高          4.2
   中13月期GDP          5.2
    3月小売売上高          4.2
    3月鉱工業生産指数        5.2
17日 ECB政策金利           2.4
   日3月通関ベース貿易収支      5040億円
18日 日全国CPI             3.7

3回目 2025421日 

個人資産形成制度の見取り図
22 公的年金制度、23 企業年金、24 勤労者少額財形制度
要点・公的年金制度の概要
  ・企業年金の概要
   確定給付企業年金、確定拠出企業年金、個人確定拠出年金(iDeCo)
  ・勤労者少額財形制度

個人資産形成制度の見取り図
 テキスト6において、ライフ・サイクル・プランの例として、海原さん、山川家、高原家のイベント表を載せています。3人の個人資産を制度支援の資産形成制度を当てはめてみます。
 海原さんは、大学を卒業して、23歳とします。65歳で、現在の会社を退職します。海原さんのイベント表は、30歳で結婚し、31歳で1子をもちます。家族ができると、山川家のライフル・サイクル・プランに移ります。したがって、海原さんは、30歳までのシングル・プランです。

海原さんイベント表
年齢  23         30   35                 60           65
    確定拠出年金(iDeCo
    財形住宅貯蓄       財形持家融資制度(フラット25) 住宅ローン完済 年金生活
    成長枠NISA
     つみたてNISA

 山川氏は大学を卒業して、33歳とします。65歳で、現在の会社を退職します。山川氏のイベント表は、25歳で結婚し、26歳で1子をもちます。妻は共稼ぎです。結婚後の資産形成は、所有権は半分ずつです。基礎年金は、個別保有の権利ですが、共稼ぎの2人の厚生年金は、半分ずつに分割されます。その他の資産は、結婚期間の共同財産ですから、離婚すれば、半分ずつです。同様に、遺族年金は、半分です。
 私のゼミ生で、離婚すると、結婚期間の厚生年金が半分に分割されるようになった、経緯を研究テーマに修士論文を書いたものがいます。当時、企業は、大企業は確定給付企業年金制度があり、従業員の拠出はなく、企業が退職時支払ってくれる退職金でした。この制度をもつ大企業に就職すると、退職時には、公的年金と企業年金の3階建ての年金がもらえるのです。企業は、毎月、支払うであろう給料を企業負債として、退職給付を積立て、退職時から、一時金か年金で支払う制度です。高原氏は、65歳で、年金生活に入っています。政府主管の年金・資産形成制度に基づいて、イベントを作成すると、次のようになります。


山川家イベント表
年齢夫     33    35       48   56          60   65   68

    確定拠出年金(iDeCo)                     年金生活
    財形住宅貯蓄         財形持家融資制度(フラット25)     住宅ローン完済
    成長枠NISA
    つみたてNISA   
  妻     30           46   53        58   62     65
       確定拠出年金(iDeCo                                         年金生活

       成長枠NISA
        つみたてNISA

高原家イベント表
年齢夫  65                           85
     老齢基礎年金・厚生年金受給
    確定拠出年金(iDeCo)受給
    成長枠NISA
    つみたてNISA
  妻  65                           85
     老齢基礎年金・厚生年金受給
      確定拠出年金(iDeCo)受給                            
     成長枠NISA
     つみたてNISA

 自主的に運用管理できる資産形成制度は、確定拠出年金、成長枠NISA・つみたてNISA制度です。運用資産は、投資信託、株式を自由に選択できるようになりました。特に、株式を勤労者の資産形成に売買できるようにした新NISA制度は、日本型の資本主義の所有者構造の転換を意味します。かつて、西ドイツでは、国民、または従業員、経営者に株式を所有させ、企業の外国人支配を防衛する制度を支援していました。日本は、自由民主主義の政治制度と資本主義制度の経済制度を基本に、政治経済を管理、運営している国です。戦前からの財閥支配構造が、引き継がれてきましたが、バブル不良債権処理が10年で終了した2003年から、日本独特である、金融機関・会社の株式持ち合いは崩れ、外国支配の問題が政府・企業・金融機関に意識され、従業員株主・経営者報酬株式を支援、ここは、一番、広く国民に、長期保有の企業ファンを増やして、安定株主になってもらうことを意識した制度設計になっています。

 2000
年に入って、バブルの清算で、超氷河期に入り、退職給付の積み立て不足に陥り、従業員負債が増大するのを嫌い、確定給付企業年金から、確定拠出企業年金に移行する企業が増えていきます。金融危機で、企業の再編もあり、企業価値の永続性が壊れました。米国も同様に、ITバブルが崩壊し、確定給付型から、確定拠出企業年金401k制度を選択するようになります。その日本版が、確定拠出企業年金制度です。要するに、創業百年以上、事業を継続できなくなり、いわゆる、老舗倒産や、そのままの事業形態では、企業が存続できなくなったのです。
 退職給付引当金と株価の関係を統計的に実証し、有意性を実証したゼミ生もいます。5年ごとの2004年、年金財政再計算を控え、年金問題が重大な政治課題だった時代です。金融リストラの時代でもあり、大阪府から、企業の広告看板が下ろされ、御堂筋の両側は、全国、海外の金融機関が軒を連ねていましたが、次々に撤退しまし、寂しくなっていった時代です。企業年金の、確定給付企業年金は維持できず、大企業でも、確定拠出型に移行するのが、新聞で話題になりました。国の年金財政の補完として、自己積立年金制度を充実させようということで、確定拠出年金制度が拡充されました。
 一方、株式市場の低迷で、米国のファンドから企業乗っ取りが流行し、あの村上ファンドや堀江モンが評判になりました。従来、銀行・保険等金融機関が持ち合い株で、流動化を阻止していたのが、日本の金融システムが再編されにつれて、持ち株を売却する銀行・保険会社も増えました。国は、株式市場形成時代から、個人投資家を育成する行政をしませんでした。戦前は、オーナー企業、5大財閥で、機関銀行の持ち合いが普通で、浮動株が少なく、相場師が暗躍、「博打場」のように、株価が乱高下したと言われています。
 戦後、企業は、株主総会において、総会屋に会場の株主を取り仕切ってもらい、経営者側優位に議事が進行するのが通常でした。これは、総会屋の横行がはなはだしく、株主民主主義の原則から、総会屋の議事進行妨害は出来なくなり、企業も総会屋を支援できなくなりました。
 戦後、銀行の株式保有には5%以下というルールがあり、系列機関で、株式を持ち合えば、企業側は安定株主の議決権51%を確保できました。金融リストラが始まって、安定株主がいなくなってしまうと、株主民主主義が機能し、3年間業績不振の経営者には、解任動議が通ることになりました。
 財務省は、証券市場が縮小するので、NISA制度で、個人投資家を投資可能な全世代に向けて、小口証券投資を税制で優遇しようとNISAが始まりました。同時に、金融商品のリスクを承知の上で、資産形成の方法を生徒・学生に学ばせる金融教育の機会を業界が提供し、文科省でも、小学校高学年から、金融教育を社会科学の分野で取り入れる流れがあります。個人は、50パーセント以上、銀行預金か保険で、資産形成をしていましたから、金融行政全体から、直接証券保有を推奨する体制に流れが進んでいるのです。1997年以降バブル退治がはじまり、100兆円以上の不良債権が処理され、戦後金融システムの再編が2003年にめどがつきました。5財閥+新興系列1の系列金融は集約され、企業間の株式持ち合い、系列金融の持合いは、解消されますが、海外ファンド等のハゲタカ株主が企業価値を切り売りすることも横行、、企業・金融の持合いが50%をわり、株主主権が総会で有効になりました。政府に、日本型の経営をする企業から、個人に安定株主になってもらう仕組みができないか、要望もあったかもしれません。ささやかな仕組みが、NISA制度であり、2024年からのNISA制度です。韓国は、日本と同じ財閥が、系列企業を持合いしています。中国は、基幹産業は政府が51%保有しています。日本は、財閥支配から、51%の株主に、従業員、経営者、日本国民になって、外国ファンドに経営権をTBOされないように、政府が制度的に配慮しているとも言えます。

22 公的年金制度

 年金制度は、3階立ての構造をしており(本文の図)、1階は、20歳以上60歳までの国民が加入する老齢基礎年金です。2階は、勤労者であれば、雇用主の条件以上は強制加入である厚生年金です。3階は、企業年金です。
 年金の保険料および給付は、賦課方式と積立方式があります。賦課方式は、毎年の保険料収入を年金受給者に配分する方法であり、国民年金、厚生年金が賦課方式です。積立方式は、加入者個人に対して、所定の期間、定期的に一定額の掛金を払込期間まで積立て、受給開始期以降、給付する方式です。掛金は全額、事業主負担の場合、自営業者等が負担する場合、企業年金等に加入していない従業員が負担する場合があります。本文では、国民年金、厚生年金の以下の項目をまとめています。

  受給資格
 受給開始年齢
 保険料
 年金額
 
 国民年金の保険料と年金給付額算定方式について、将来の受給額については、日本年金機構のHP「ねんきんネット」で、保険料の支払い記録と年金受け取り見込み額を知ることができます。国民年金、厚生年金に、保険料とあるのは、年金に保険機能が付与されているためです。5年ごとに、国勢調査結果、人口統計等から、年金財政の均衡を再計算し、保険料を改訂します。厚生年金は保険料額表が公表されていて、給与明細書を保存していれば、簡易計算できます。厚生年金は、一元化されましたが、厚生年金機構に、一元化されていないので、もとの制度にしたがうしかありません。それゆえ、「厚生ねんきんネット」はないので、保険料の支払い記録と年金受け取り見込み額は、いろいろな金融機関等の簡易計算で、推測するしかありません。
 いわゆる年金財政の危機は、国庫負担が50%となった国民年金の方で、厚生年金ではない。受給開始年齢を70歳にする、保険料支払いを65歳までにする、保険料を上げない代わりに、消費税を20%以上にし、消費税から直接徴収するとか、政官民学が主張する議論があります。
 年金額が、年金数理計算で決まると、物価変動に対しては、物価スライド制があり、経済変動に対しては、マクロ経済スライド制があります。年金額の改訂は、物価上昇および経済成長率に依存する計算によって決められています。アベノミクス政策において、2%物価上昇、経済成長率?%の目標を5年間、前者は日本銀行が、後者は経済諮問委員会が政策を実施しました。目標は達成できず、日銀は、地方銀行の経営悪化を招き、借り手不足というか、地方は、高齢少子が進み、企業の廃業が進んでいます。2020年度、マクロ経済スライド制が発動され、年金増加額が0.2%に抑制されました。2021年度は、両制度は物価上昇、経済成長が規定に達成せず、発動されませんでしたが、年金は-0.1%減額されました。
 国民年金財政には、過去の余剰金があり、保険料総額>給付総額の状況にあり、日本年金機構が、余剰金を運用していて、昨年からの米国の金融正常化政策により、株式市場が引き締まってきました。そのあおりで、日本の株式市場も下落しています。日本年金機構の運用状況は、公表されるので、株式に損失が出たようです。20199月から、日本株式市場に海外投資家の資金が流入し、米国の金融緩和回帰があり、米国の株式市場も上昇しましたが、中国の新型コロナウイルスの世界拡散が発生し、ダウは3分の1消滅しました。20207月から、規制は緩和されました。コロナショックから、財政支出で持ち直し、米FRBは、金融緩和に戻しました。2021年、コロナワクチンの接種率が上がるとともに、世界経済は、緩やかに、回復過程に入りました。
 運用について、リスク資産は、民間運用会社に競争運用を委託する国もあります。日本の年金財政の危機は、高齢者の増加で、受給者が増加し、保険料総額<給付総額の状況となり、余剰金で差額が賄われので、余剰金が減少することです。

23 企業年金
 
 企業年金は、確定給付企業年金、確定拠出企業年金、個人確定拠出年金(iDeCo)に分けられます。確定給付企業年金が、企業の従業員からの負債となり、企業の事業業績が落ちると、企業は利潤から積立不足を補てんしなければなりません。株主の配当がその分減少するので、株価の減少要因になります。確定拠出企業年金に移行し、企業は一定額を拠出し、その運用は、従業員に委ねられます。確定給付企業年金と比較すると、退職給付引当金に入らないので、大企業も、この制度に移行するようになってきました。本教室は、従業員が、その場合の運用管理をどうするのかに答えるのが、大きな目的です。
 大企業が確定給付企業年金制度をもっていますので、概要は省略しました。テキストでは、確定拠出年金と個人型確定拠出年金の概要は、詳しく、載せています。

今週(2025421日~425)のイベントと市場への影響度
 先週のイベントは、13日大阪・関西万博が開幕しました。1013日まで開かれます。
 今週のイベントは、21日から26日まで、ワシントンでIMF・世界銀行周期総会が開かれます。2320ヵ国財務相・中央銀行総裁会議が24日まで、ワシントンであります。
 先週の統計は、次の発表がありました。
                   予測値      実績値
14日 中3月貿易収支                  -7367億元
   日2月鉱工業生産指数        0.3%       0.1
16日 日2月機械受注          -0.7%       1.5
    3月小売売上高          1.4%       1.4
     3月鉱工業生産指数       -0.3%       -0.3
   中13月期実質GDP        5.2%        5.4
    3月小売売上高          4.2%        5.9
    3月鉱工業生産指数        5.7%        7.7
17日 ECB政策金利           2.4%        2.25
   日3月通関ベース貿易収支      5040億円    5441億円
18日 日全国CPI             3.7%      3.6

 今週の統計は、次の発表があります。
                   予測値
21日 米3月景気先行指数        -0.5
   中4月最優遇貸出金利(LPR)   
24日 米3月耐久財受注         1.4
   日4月東京都区部CPI        3.2
          3月スーパー売上高


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